夫の検査

「数」(=精液検査)と『質』を一気にスクリーニング

不妊治療開始に際し、当院では、奥様のスクリーニングと同時進行でご主人様も系統的スクリーニング検査を行います。
その検査は、単なる精液検査のみではありません。
精子の『質』までも一気にスクリーニングしています!

一次検査

● 精子酸化ストレス検査 (自費 (税込):11,000円)

もちろん同時に精液検査も行い、費用は込みです。
(精液検査のみは保険診療です。)

  • ・ 一次検査で基準を満たさない場合
  • ・ 原因不明不妊の場合
  • ・ より高度な不妊治療への移行準備
  • ・ ご希望がある場合
  • など
二次検査

● 触診・超音波検査(保険診療)

主に「精索静脈瘤」という病態の有無を確認します。

● ホルモン検査(保険診療)

造精にかかわるホルモンの検査です。

● 精子DNA断片化検査(自費(税込):36,300円)

【男性不妊検査をご希望の方へ】

以下サイトにてご確認いただき、ご予約の上ご受診ください。

★夫の検査ガイダンス★
こちらのサイトでご案内させていただいておりますので、ご確認・ご予約下さい。

近年の「男性不妊」の考え方

現在、不妊治療に際し、夫は主に精液検査によって評価され、数が少ないとそれに応じて体外受精・顕微授精など治療方針が決定されています。
これにより多くの赤ちゃんが誕生しているのも事実ですが、一方で、非常に苦戦を強いられている方もいらっしゃいます。
「精子はたった一匹だけいればいい」はずの顕微授精を何回行っても、なかなか妊娠に至らないご夫婦がいるのです。

最新の男性不妊の考え方では、精子の①『数』による不妊症に加え ②『質』による不妊症があるとされています。
精子の『質』が良好な男性不妊は、確かに体外受精・顕微授精で妊娠可能なのですが、精子の『質』が低下している場合は、高度不妊治療を用いても苦戦することが多くなるのです。

不妊治療の現場では、従来より精液検査のみ=「数」のみで男性妊孕能が判断されており、『質』へのアプローチが全く行われずに高額な不妊治療が行われていることがあります。
こうして、そもそも精子の『質』の低下に気が付かれないままに高額な不妊治療が行われ、時間が経過してしまう不幸なケースが実際にいらっしゃるのです。

精子の『質』とは?

睾丸内(医学的には「精巣」といいます)で作られた精子は輸送されていくわけですが、この輸送過程で他の細胞たちと同居する状態になります。
この同居人たち(=「未熟な精子」や「白血球」)が、活性酸素を出します。
この活性酸素が精子に様々なダメージを及ぼすとされています。

特に、精子が頭部に蓄えている「赤ちゃんのためのDNA」がちぎれてしまう、という非常に深刻な事態となることすらあります。
この状態を精子DNA断片化と呼び、この状態がどの程度であるか、が精子の『質』に相当する、と考えられています。

このようにDNAがズタズタにちぎれた精子を、たとえ顕微授精を使って卵子に預けたとしても、卵子が処理の限界を超えてしまい、結局は妊娠に結び付くことが困難になってしまうわけです。

「DNAが断片化してしまっているかどうか?」は、現在のところ、どんなに高性能な顕微鏡を用いても判断することは困難と考えられています。
まして通常の精液検査では全く判定できていません。

精子の『質』を評価しないままに不妊治療を行うこと、特に体外受精・顕微授精などの高額な治療を行うことがいかに恐ろしいことか、お判りいただけるかと思います。

精子の『質』はどう調べるのか?

精子の『質』を低下させる原因は「活性酸素」、その結果、精子のDNAが断片化しますので、①精液中の活性酸素はどの程度か? ②精子のDNAはどの位断片化しているのか?を調べて精子の『質』を評価していきます。

① 精子酸化ストレス検査

精子酸化ストレス分析機を用い、精液中の活性酸素のレベルを調べることが可能です。
基準値より高い場合、精子が酸化ストレス環境にあることが示唆されますので、「なぜ活性酸素が多くなってしまっているのか?」という視点で原因を調べていきます。

② 精子DNA断片化検査

何%の精子のDNAが断片化しているのか?を調べる検査です。
世界的に主に4種類の方法が用いられていますが、当院ではSCD法を用いています。

精子の『質』の治療

ホルモン異常に対する治療

精路にて活性酸素を出す細胞の一つが「未熟精子」です。
精子形成のための十分なホルモン刺激が不足していると未熟な精子が増えてしまうため、これが活性酸素を出す原因となります。 この場合、ホルモン療法を行い、造精刺激を十分行うと、活性酸素が減ることになり、精子の質が改善する可能性が報告されています。

精路感染症の治療

精路にて活性酸素を放出するもう一つの細胞が「白血球」です。このため、精路感染症を有する場合、これを治療すると、活性酸素が減り、精子の質が改善する可能性があります。

精索静脈瘤の治療

睾丸(精巣)周囲の静脈が怒張している状態を精索静脈瘤といいます。
精索静脈瘤があると、(原因は完全には解明されていませんが)活性酸素が増加し、精子DNA断片化率が上昇することが知られています。
また、精子数や運動率も影響を受けている可能性があります。
この場合、手術を行うことで、精子数/運動率が改善したり、精子DNA断片化率が改善し、不妊治療の成功率が上昇する可能性が報告されています。

生活習慣の改善

精路中を酸化ストレス状態にする生活習慣として、肥満/喫煙/飲酒が挙げられます。
また、抗酸化物質は植物(野菜/果物)に多く含まれていますので、食生活を改善していただくことも効果的です。
精子が作られるのには低温が適している、と聞かれたことがあるかと思います。入浴習慣や下着(ブリーフよりトランクスが望ましいとされています)を見直していただくもの効果的です。

抗酸化療法

抗酸化剤を内服して、活性酸素を中和すると精子の「質」が良くなると考えられています。
一方で、酸化ストレス状態(活性酸素が過多の状態)にない場合に抗酸化剤を内服すると、逆に生体に必要な活性酸素すらも阻害してしまう状態となり(還元ストレス)、逆に不妊原因となる可能性があるとされています。
このため、適切な検査をせずに雰囲気で「男性不妊用のサプリメント」を内服するのは非常に危険な行動です。ぜひお控え下さい。

禁欲期間の短縮

禁欲期間が長くなると、精子DNA断片化率が上昇することが知られています。日ごろから(生活習慣として)禁欲期間を短くすることを意識してください。

精巣内精子の使用

射出精子が高度にDNA断片化を起こしていても、精巣内精子のDNA断片化率は低いことが知られており、精巣内精子を使用した顕微授精が効果的な場合があることが報告されています。

当院でも、

① 射出精子による体外受精・顕微授精で胚質が悪く、内服治療などによってもDNA断片化率がコントロールできない場合。
② 奥様の年齢により、ご主人様の回復を待つ猶予が許されない場合

に、精巣内精子を用いた治療で挙児に至ったケースを複数例経験しています。

診療時間

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